第2回世界乳幼児精神保健学会日本支部セミナー


本年度は日本児童青年精神医学会の協力を得て、第56回日本児童青年精神医学会横浜大会会場にて総会を開催いたしました。本年度は児童青年精神医学会招待講演者の米国Tulane大学Zeanah教授による学術セミナ―を、総会前に行いました。児童青年精神医学会初日29日の午後、Zeanah教授のもとで学ばれた青木豊先生の司会により、同教授の記念講演(929日(火)1550分から1650分、1階メインホール、講演タイトル「Attachment Disorders In Early Childhood: Questions, Answers and More Questions」)が行われました。その後、世界乳幼児精神保健学会日本支部によるセミナーが開催されました。わが国で現在ますます深刻化する児童のこころの問題の背景に、早期の不適切養育とアタッチメント障害が存在し、その影響はライフサイクルおよび次世代にわたることについての認識を深めたいと思い、日本の社会養護に携わる現場からのZeanah教授への質疑応答と討論が行われました。

(セミナー後に世界乳幼児精神保健学会日本支部2015年度総会を開催)

 

                                        記

  

世界乳幼児精神保健学会日本支部

2回総会ならびにセミナー

 

日時:2015929日(火) 180019:00

場所:パシフィコ横浜 3F 313+314号室 http://www.pacifico.co.jp/ 220-0012  横浜市西区みなとみらい1-1-1

 

プログラム

Ⅰセミナー (18:00-18-50

テーマ: 不適切養育とアタッチメント障害 -乳幼児期から青年期までの心の問題の統合的理解とケアに向けて-

講師:  Charles Zeanah先生(Tulane Institute

座長・通訳・司会:青木豊先生(目白大学 人間学部 子ども学科)渡辺久(WAIMH日本支部会長、 渡邊醫院)、吉田敬子(WAIMH日本支部副会長、 九州大学病院 子どものこころの診療部)

指定討論: 川口孝一先生(鳥取こども学園)、黒崎充勇先生(広島市立舟入市民病院) 

 

Ⅱ WAIMH日本支部総会:(18:50-19:00)            

2015年度総会

 



6回国際ウィメンズメンタルヘルス学会に参加して

世界乳幼児精神保健学会日本支部主催の第1回公開セミナーの翌日、2015322日から25日まで京王プラザホテルにて第6回国際ウィメンズメンタルヘルス学会が開催されました。周産期・母子乳幼児保健、およびその後の子どもの発達として、小児・思春期・青年期まで続く情緒・行動・認知の発達の問題などについて多くの研究報告、臨床実践の活動内容についての報告が行われました。その中で、WAIMHシンポジウムおよび、私たちの領域に関連している講演をご紹介いたします。

WAIMHシンポジウムの様子


Helen Herrman先生の講演より (吉田敬子)

第6回国際ウィメンズメンタルヘルス学会の大会長のお一人である、Helen Herrman先生は、女性および子どもと家族のメンタルヘルスに取り組むことの意義と重要さについて強調され、包括的なご講演をされましたので、以下そのご報告をいたします。

 

Helen Herrman教授について

Centre for Youth Mental Health, The University of Melbourne, Australia

Director, WHO Collaborating Centre in Mental Health, Melbourne

President Elect, World Psychiatric Association

Herrman先生は、メルボルン大学の精神科の教授です。特に女性や若年者のメンタルヘルスをご専門とされており、世界精神医学会の会長にご就任が決まっております。また、精神医学のみならずメンタルヘルスの向上のためにWHOと連携して、様々な教育、啓蒙、政策の策定などに関与しております。

 

Herrman先生のいくつかの講演の中から以下の2つの講演をご紹介します。

Promoting resilience in women affected by child maltreatment and intimate partner violence(幼少期に虐待を受けたり、パートナーからの暴力を受けた女性のレジリエンスを高める)

Improving the mental health of women and girls in adversity(心理社会的な逆境に曝された女性や少女のメンタルヘルスを高める)

 

Helen Herrmanは、国立青少年メンタルヘルスセンターで心理社会的に脆弱である方の教育実践を行っており、その観点から、上記の2つの内容については、包括的なアプローチを含めた講演であった。

その中で特に幼児期に虐待を受けたり、パートナーから暴力をうけている女性をライフスパンで支援していくこと、これらの女性のレジリエンスを高めることが、重要であることを強調した。かつ、これらの女性を支援する臨床実践家も、また支援のための政策を立てる人たちもこの重要性に気付き、それを共有してメンタルヘルスの向上に努めることの意義を強調した。また、政策作成のためには、レジリエンスを高めることの波及効果について研究を重ね、エビデンスを出されていくことが必要であることを話された。

 具体的には、プリベールネットワークを紹介された。PreVAilPreventing violence across the lifespan research network)  とは、カナダにおけるヘルスリサーチ研究所によって設立されたリサーチネットワークである。このネットワークは50以上の研究者や国際的な研究機関からなりたっており、以下の3つの目的がある。一つは、心理社会的な脆弱性とメンタルヘルスの障害には関連があるという正しい知識をつけること。第二は、介入と予防について学ぶこと。第三は、ネットワーク機関を通じて、各研究者の所見や研究を発展推進していきネットワーク間相互で得られた情報を共有する。そしてさらに新たな研究のエビデンスを蓄積し開示し、予防や介入に対する出資につながるような発信していくことである。このネットワークの基本理念は、これまでに女性が心理社会的に不利な脆弱状態にさらされてきた事実があったとしても、人生のどこからのステージでもリジリエンスを高めていけるような方策を取り支援するということである。

 

【解説・参考文献情報等】

女性が暴露されている心理社会的な脆弱性については、ALSPAC Studyhttp://www.bristol.ac.uk/alspac/)が、妊婦のストレスと子どもの長期予後の関連についての前方視的なリサーチを行っている。幼少時期に虐待を受けたり、パートナーからの暴力を受けた女性が妊娠し母親となった場合、赤ちゃんの出産に関連して、彼女たちが、高いストレスを抱える。また、その子ども達は、小児思春期青年期に至るまで長期にわたり情緒・行動・認知の面でマイナスの影響を受けること、また、その子どもたちが思春期にうつ病を発症する率が高いことも明らかになった。このようなことから特に周産期から乳幼児の精神保健への取り組みの重要性が強調されている。


WAIMH日本支部主催公開セミナー

2015年3月21日に慶應義塾大学三田キャンパスにおいて、WAIMH日本支部主催の公開セミナーを開催しました。

「乳幼児精神保健への招待」

 クリニカル・レクチャー

  渡辺久子(元慶應義塾大学医学部小児科学教室・世界乳幼児精神保健学会日本支部会長)

 事例検討コメンテーター

  Miri Keren先生(世界乳幼児精神保健学会(WAIMH)会長)

  Palvi Kaukonen先生(フィンランド タンペレ大学・世界乳幼児精神保健学会(WAIMH)会長事務局長)



世界乳幼児精神保健学会日本支部主催公開セミナーの感想

2015321日) 

クリニカル・レクチャー「乳幼児精神保健の基礎」の感想

  • 渡辺先生の熱意溢れる講演は基礎的な考え方をコンパクトにまとめてくださり、とてもわかりやすく、新たな学びや発見が多いものであった。

  • セミナーに参加する度に、“内臓感覚”や“愛着理論”等に関する、新たな知識が得られ、ためになった。

  • 乳幼児精神保健について、さらにしっかりと勉強していきたいというモチベーションが上がった。

  • 時間の制限があったために、話のスピードが速かった。 

症例スーパービジョンの感想

  • 貴重な症例を見せていただき、解説してくださったことで、具体的なことを感じ取ることができた。

  • 渡辺先生の素晴らしい臨床パフォーマンスを見せて頂き、“内臓感覚”の大切さ、介入の仕方等を学んだ。

  • 海外の先生方のコメントは自分で気付けない視点を教えていただき、学びを深めてくれた。

  • 母子と治療者とのやり取りの瞬間を見ることができ、更にその解説が臨床の重要性を理解するために非常に役に立った。

  • 重要なエッセンスが詰まっていて、見る度に新たな発見が得られるビデオだった。

  • 自身の実践を振り返る機会になり、訓練の大切さを改めて実感した。

  • 治療者がいない所の親子の様子がはっきりと目に見えるようになり、質疑応答などでさらに理解が深まった。

  • ビデオの音声が聞き取りにくかった。 

今後開催するイベントに希望するテーマや内容、日本支部へのご意見、ご感想

○希望するテーマなど

  • 虐待予防(治療にこってこないケース)

  • ASDと診断されたが、そうではなかったケース。

  • 今日のような乳幼児の臨床や研究のビデオがあると良い。

  • スーパービジョンが興味深いように思う。

  • 生き生きとしたインタラクションから学ぶことが多いと思う。

  • 今回のようにスーパービジョンのあり方をしっかり示して下さるセミナーとして構成してほしい。

  • 片親の子の心の成長に興味があり、それにふれるようなトピックの勉強会があったら嬉しい。

  • 乳幼児、親治療についてさらに学習する方法について(多方面の方法)教えていただけるとありがたい。 

○日本支部へのご意見

  • 世界とのつながり、日本の再評価や発信を実現していける場となることを願っている。

  • 世界の各地で乳幼児精神保健がどのように展開されているのか等、論文だけでなく“臨床”の部分を伝えて頂き、日本の現場を刺激して頂けたら嬉しい。日本がもっとよくなりますように。

  • この学会やFOUR WINDSをもっと日本全国に広めていきたいと思う。

  • 学生にとって、なかなか知ることのできない分野であるため、アクセスのしやすい機会を増やしていただきたい。

  • 今後もセミナーなど、勉強できる機会があれば教えていただきたい。

  • このような機会をまた設けていただきたい。毎年必ず開催してほしい。


WAIMH日本支部主催シンポジウム

2014年11月24日に郡山市において、WAIMH日本支部主催のシンポジウムを開催しました。

「被災のもとで生きる乳幼児と家族の今と未来 -日本支部の役割―」

Kaija Puura先生(フィンランド タンペレ大学・世界乳幼児精神保健学会運営委員)

鈴木廣子先生(岩手県盛岡市 すずきひろこ心理療法研究室 児童精神科)

本間博彰先生宮城県子ども総合センター 児童精神科)

渡辺久子(元慶應義塾大学医学部小児科学教室・世界乳幼児精神保健学会日本支部会長)



Hope Igleheart 先生の講演会

2014427日に、慶応大学病院において、発足したばかりのWAIMH日本支部の初めての主催講演会である、「乳児期の母子間の音声のやりとりが、後の愛着形成やパーソナリティに与える影響」をテーマとするHope Igleheart 先生の講演会が開催されました。


「乳児期の母子間の音声のやりとりが、後の愛着形成やパーソナリティに与える影響」

"Vocal Turn-Taking Coordination in Infancy, 12 Month Attachment, and Young Adult Outcomes."

講師:Hope Igleheart 先生

精神分析家、臨床心理士、The National Psychological Association for Psychoanalysis会員、スーパーバイザー、訓練分析者、

コロンビア大学Beatrice Beebe先生の共同研究者